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no.17「EBMとNBM」

EBMNBM


 皆様明けましておめでとうございます。

 新年、最初のコラムはEBMNBMについて書かせていただきたいと思います。

 EBMにも、NBMにも精通しているわけではないので、温かい目でご覧いただければ幸いです。


 私の所属する組織には、年々大学院卒の就職者が増加しつつあります。院卒のスタッフは全体で1割弱となっています。皆様の組織でも院卒のスタッフが徐々に増え始めているのではないでしょうか?院卒のスタッフが増えるということは、リハ組織においてEBMに精通した人材が増えることを意味します。(NBMの手法を学ぶために院に進んだ方もいると思いますが、少数と思われます。)組織の戦略を考えると、これはEBMに精通した人材の不在という「弱み(weakness)」の改善が図れるチャンスと捉えられます。このEBM、またそれに精通した人材をどう扱うか?組織運営に関わる立場では、必ず検討しなければならない内容と思われます。

 改めてEBMNBMについて再確認します。EBMとは、「根拠に基づく医療(Evidence-Based  Medicine)」と訳され、客観的に証明された介入技法を用います。EBMの基礎には科学思想があり、統計学と結びついています。EBMのデメリットとしては個別性に弱いことが挙げられます。対してNBMは「物語に基づく医療(Narrative-based Medicine)」とされ、患者との対話を重視します。対話によって現在抱えている問題を身体的・心理的・社会的など様々な側面から捉え、アプローチする手法を指します。

 EBMNBMは一見、二項対立的に捉えられがちかもしれません。事実、私は一時期、客観的効果を証明できない治療手技は、淘汰されるべきではなのではないかと考えていました(本当にすみません)。しかし就職してから現場で熱心に治療される臨床家の方々を見ることで、NBMとして長年培われてきたものを「証明できないから」と切り捨てることにも疑問を持ちはじめました。かの有名な理学療法士の山嵜勉さんも、治療の効果は機械では測定できない小さなものが多いからエビデンスにならない、患者さまの治療から得られる経験を大事にするようにとおっしゃいます。

 EBMを用いて、一般的に効果的である治療方法を検討しつつ、NBMを用いて多面的に患者を捉え、治療方法を組み立てる。つまりEBMNBMは二項対立ではなく、相互補完的であるということです。これはEBMNBMについて書かれた多くの書籍にも、必ずほぼ同様の内容が書かれています。うちのトップはEBMNBMの関係について、「エビデンスは患者様という『目的地』の『最寄り駅まで近づく方法』であるが、患者様のすぐそばまで近づくにはナラティブが必要である。」と言っていました。これは皆様にとっても腑に落ちる表現ではないでしょうか?

 更なる組織成長のため、EBMとNBMにまつわる組織の戦略や人材の活用をどう打ち出すのか。検討すべき時期はもうきているのかもしれません。


2015.1.22 R・T

 

参考文献

 奥野 雅子 「ナラティブとエビデンスの関係性をめぐる一考察」