お問い合わせ

コメディカル組織運営研究会

事務局

e-mail:

co.medical5@gmail.com

no.109「運動と脳の関係を、組織におきかえて考える」

人類の長い歴史を考えると、狩などをしなくとも十分な食料が手に入るようになり、身体を動かす必要がなくなったのは、つい最近のことになります.いまや、食料や食品はスーパーマーケットやコンビニエンスストアで手に入るだけでなく、インターネットで注文すれば直接配達してくれる時代となり、現代人は、昔に比べて身体を動かす機会を大きく減らしました.一方、未だに私たちの脳と身体は、生物学的には狩猟採取民としての特性を踏まえているそうで、「身体活動量の低下」がもたらす脳への影響は、思った以上に大きいようです.

 

 その脳への不具合を解消するのが「定期的な運動」である、と教えてくれるのがアンデシュ・ハンセン著「運動脳」です.リハ専門職にとっては、有酸素運動や筋力トレーニングはとても身近な存在ですが、この書籍では運動がもたらす、ストレス解消、集中力や記憶力の改善効果、うつやモチベーションへのよい影響、創造力を高める効果、そして脳のアンチエイジングに関することまで、とても分かりやすくまとめられています.

 

 運動が脳へもたらす恩恵の中に、「脳神経細胞同士のネットワークの強化」が挙げられます.私たちのパフォーマンスは、脳の一か所に依存しているわけではなく、脳の各領域が構築する発達したネットワークが連携した結果であると考えられます.もちろん、起点になる領域が司る機能はあるわけですが、そこから脳の中で広がる神経経路のネットワークが強化されることが、脳の機能に大きな影響を及ぼし、それを効果的に強化・改善するのが「定期的な有酸素運動」であるとのことです.

 

 これを組織運営に置き換えると、より多くの人たちが企業や組織として集まり、より多くの成果を求めて協業できるようになったのが、食料の確保に追われる必要が無くなった後のことだと考えた場合、ある程度の規模の組織を運営するということは、ごく最近から行われ始めたことなのかもしれません.そのため、経営学は、経済学と比較するとまだ新しい領域の学問、ということになるのでしょう.

 

 組織が健全に運営されるためには、組織内の人や情報のネットワークが適切に構築され、調整されることが重要になります.ピラミッド型の垂直的なネットワークではなく、必要な回路が適宜修正される有機的かつ水平的なネットワークです.面白いことに、これまでの組織の発達段階を考えた場合にも、現代では封建的で垂直的な組織形態から、多様性と平等性と文化を重視し、ステークホルダーを含めたつながりを大切にするコミュニティー型組織が成果を上げるようになってきているのです.

 

 では、組織にとって、人間の脳における「運動」の効果をもたらす取り組みは何になるのでしょう.個人的には、組織内のネットワーク構築を促すよう、日々の業務の中に埋め込まれたさまざまな取り組みの全てがその役割を果たすのではないかと思います.スタッフやステークスホルダーのコミュニケーションを通して、相互理解や協調を促すような大小さまざまな取り組みです.そして、このような取り組みは、人間にとっての運動と同じように、意識的に行わないと持続することができません.

 

 人間における運動の効果について書かれた書籍でしたが、そこから組織における発達段階や、運動に当たる取り組みを考えることのできた、有意義な読書でした.

 2022年11月5日

M.Y

 <引用・参考文献>

アンデシュ・ハンセン 「運動脳」 サンマーク出版 2022

フレデリック・ラルー 「ティール組織」 英知出版 2018 

(こちらは、組織の発達段階について述べられています)

コメント: 0

皆様からのコメントをお待ちしています。

質問などにも一部お答えさせて頂きます。