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no.39 書評-『職場の人間科学 ビックデータで考える「理想の働き方」』

 ここ数年「多職種連携の必要性」や「顔の見える関係の重要性」、つまりはコミュニケーションの大切さがよく言われています。
 しかし、「コミュニケーションは重要」ということはなんとなくみんな理解していますが、その事実を裏付ける客観的データというのをあまり見たことはありません。

 

 『職場の人間科学 ビッグデータで考える「理想の働き方」』(ベン・ウェイバー著)は、赤外線や加速度計が装備されたセンサーバッチを名札(IDカード)などに装着し、スタッフが「どこで」「誰と」「どういう具合に」コミュニケーションが行われているかをリアルタイムに計測した結果を基に、従来とはまったく異なる職場改善の方法を提案しています。

 

 本の中では、あるコールセンターの事例を紹介しています。コールセンターにおいて、業務の生産性を高めるためには、従来「いかに私語をなくすか」や「いかに休憩を調整して、人員配置に穴がないようにするか」といったアプローチがとられて来ました。しかし、データを解析した結果、チームのメンバー全員が一斉に15分間休憩する時間を設けた方が、相互のコミュニケーションが高まり、業務に好影響をもたらす可能性が高いそうです。

 

 その他にもコーヒーメーカーの配置やランチテーブルの長さや形を変えることで、普段会話をしない人との会話が生まれやすくなり、組織の生産効率の高さに影響を与えるなどの興味深い事例が紹介されています。

 

 病院でもコミュニケーションを活性化するために様々な方法が試されますが(だいだい飲み会のなることが多い)、スタッフルームの机のデザインや電子カルテ端末の配置などを見直すのも一考かと思います。

 

 センサーバッチがこれからもっと小型化・安価になることで、プライバシーの問題さえ解決されれば、多くの職場にも導入されるかもしれません。
 その際に、現在はほとんど評価されることがない、後輩からの臨床の相談を受けている時間の長さや、多職種との情報交換が可視化されることになり、人事評価の基準などが変わる日が来るのかもしれません。

 

 私個人としては、息苦しさを感じるという面はありますが、これまで、「経験」や「勘」がまかり通ってきたマネジメント・職場改善の方法が、センサーによって集積されたデータによって客観化される時代は確実にやってくると思います。

 

 興味のある方は、一度手にとって読んでみてください。

 

2016年10月1日 N・K

 

参考文献 

・ ベン・ウェイバー,千葉 敏生(訳):職場の人間科学 ビッグデータで考える「理想の働き方」.早川書房.20014年.

 

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