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no.88「患者さんのためというマジックフレーズ」

「患者さんのため…」

この言葉は日常よく耳にすることが多いのではないでしょうか?

 

行動経済学の概念に利他性というものがあります。利他性とは、他人の喜びを自分の喜びのように感じたり、他人を支援する行為そのものから自分の喜びを見出したりするような性質のことです。このような性質をもつ人は、患者さんの立場に立つことができ、より親身になって接してくれるだろう、と期待するかもしれません。

利他性には、2つのタイプがあります。ひとつは純粋な利他性と呼ばれ、他人の幸福度が高まることが、自分の幸福度を高めるというものです。つまり、他人の喜びを自分の喜びとして感じ、他人の悲しみを自分の悲しみとして感じるというように、共感特性の強い人があてはまります。もうひとつは、ウォーム・グローと呼ばれ、自分が他人のためにする行動そのものから幸福感を感じるというものとなります。

 

医療従事者は、少なからず利他性をもっているものだと考えます。

少しでも質の高いサービスを提供しようと、日々自己研鑽し、様々な工夫をしながら業務に取り組んでいることと思います。また、この利他性をもっていることが、働く動機付けとなっていることも多いでしょう。そのためか、勉強会は勤務時間外が当たり前という雰囲気もまだまだあるのが現状ではないでしょうか。

 

その一方で、この利他性が高い人は、バーンアウトしやすいとも言われています。

前述したように、多くの医療従事者が勤務外で患者さんのために多くの時間や費用を費やしています。言い換えれば、今の医療・介護サービスの質は、このような利他性に依存しているとも言えるでしょう。スポーツ競技者に対するトレーナー活動でも、同様の現象を耳にします。以前に、ある人気ドラマの中では「やりがい搾取」という表現もされていました。

 

まわりを見渡すと、利他性が高いと思われる人は少なくないのではないでしょうか。そういった人がバーンアウトしないよう、日頃からコミュニケーションをとり、おかげさま、お互いさまと協力できる職場をつくりたいと思いました。

 

2020年12月6日

N.T

 

<参考・引用図書>

大竹文雄,平井啓(編著):医療現場の行動経済学.東洋経済新報社

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