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no.103「リアリティショックの緩和方法」

 4月から病院で作業療法士として働きはじめた友人の娘から相談を受けました。

 「養成校では『チーム医療が大事』と習ったけど、医者を頂点にしたヒエラルキー組織じゃん」「『患者さんとの信頼関係を築く』と習ったけど、現場は忙しくて効率重視で信頼なんて築けてないじゃん」だそうです。

 完全な「リアリティショック」です。精神的に強い人なので、「○○(名前)が組織を変えてみたら?」と話を流してしまいましたが、医療業界ではよく聞く話です。

 

 「リアリティショック」とは理想と現実のギャップに衝撃を受けることで、事前に思い描いていた仕事や職場環境のイメージと、実際に現場で経験したこととの違いを消化しきれず、不安や幻滅、喪失感などを強め、ときに離職にまでいたる問題をいいます。新人医療従事者の離職率の高さは、リアリティショックが背景にあるのかもしれません。

 

 新人医療従事者のリアリティショックの要因としては

①仕事ショック:養成校で習ったことと実際の仕事のギャップ

②対人関係ショック:職場の先輩、同期、他職種との人間関係のギャップ

③他者能力ショック:職場の先輩、同期との仕事能力のギャップ

があげられます。

 友人の娘の場合は、①②が該当するのでしょう。私の場合は新人の頃、先輩や同期が仕事が出来過ぎて、毎日泣きそうだったので③が該当します。

 

 一般的なリアリティショックへの対策としては

①リアリスティック・ジョブ・プレビュー(仕事内容をできる限り実像に近いかたちで下見させること)

②入職後は、教育担当者をきちんとつける(ほったらかしにしない)

③先輩はコミュニケーションを意識的にとる(「人は人々によって育つ」)

があげられます。

 しかし、①に関しては、友人の娘は新型コロナウィルスによって、臨床実習や職場見学が満足にできなかった世代です。

 また、②に関しても看護業界は伝統的に、新人看護師と年齢の近い先輩看護師が一定期間、マンツーマンで臨床実践を指導するプリセプター制度を導入し、リアリティショックを緩和する教育体制をとっているようですが、友人の娘が所属する病院は、プリセプター制度はとらず、「職員みんなで教える」という方針だそうです。

 

 友人の娘がちょっと心配になってきました。

 皆さんの職場では、どのようなリアリティショック対策をとっていますか?

 

 よかったら教えてください。

2022年5月16日

N.K

 <参考文献>

尾形真実哉(2012)「リアリティ・ショックが若年就業者の組織適応に与える影響の実証研究 : 若年ホワイトカラーと若年看護師の比較分析」 組織科学45、49-66

 

中原淳、パーソルグループ(2016)「アルバイト・パート採用・育成入門 「人手不足」を解消し、最高の職場をつくる」 ダイヤモンド社

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