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no.111「職員のモチベーションを高める職務デザイン」

 ある現場で「あの職員は以前と比べてモチベーションが無いんですよね~」と耳にした。数日後、別の会議では「もっとモチベーションを持ってやらないとだめじゃないか!」と叫ぶ人もいた。では、職員のモチベーションを上げる手段を講じているのだろうかと問うと、だれも何も答えてくれない…。(これはフィクションです)

 

 折しも、ふと目を向けた日経ヘルスケアには、職員のモチベーションアップで知恵を終結!ボトムアップ組織の作り方1)の特集が組まれていた。どうやら経営・運営を「自分事」にすることが大切で経営者が覚悟を持って取り組むことが大切らしく、職員のやる気を集結するポイントや取り組み事例が紹介されていた。しかし、それらの事例を読んでも腑に落ちなかったのは、私が「自分事」に感じてなかったからだろう。では、職員のモチベーションを高めるために我々が出来ることは何だろうか?それを知るにはモチベーションとは何か?を掘り下げる必要がありそうだ。

 

 世界標準の経営理論2によれば、モチベーションは一般に「やる気・動機」「士気」などと解釈され、2つ定義が示されているが、共通するのは人の行動に影響を与えるということだ。さらに行動の方向性、程度(活力・規模)、持続性に影響を与えるものである。モチベーションはシンプルなものではなく、複雑な心理メカニズムが入り混じっているため「人を動機づける」のは簡単ではない。モチベーションの種類は、外発的動機と内発的動機があるが、内発的動機の方が個人の行動へのコミットメントや持続性を高めることなどは、ほぼ学者のコンセンサスとなっているようだ。

 本書ではニーズ理論、職務特性理論、期待理論、ゴール設定理論、社会認知理論、プロソーシャルモチベーションといった理論が紹介されているが、職務特性理論(Job characteristics theory)を知った際にはアハ!とした。

 

 職務特性理論は1970年代にエール大学の社会心理学者リチャード・ハックマンらが提示したもので、重視されるのは内発的動機だ。内発的動機を高める職務特性は以下の5つとされる。

    多様性(variety):職務の遂行において、従事者の多様な能力を必要とすること。

    アイデンティティ(identity):従事者が最初から最後まで職務に携われること。

    有用性(significance):職務が、他者の生活・人生などに影響を与えること。

    自律性(autonomy):従事者が自律性を持って仕事できること。

    フィードバック(feedback):従事者が職務の成果をきちんと認識できること。

 職場をマネジメントするとき、上記の5つの特性を考慮して職務をデザインすることで職員のモチベーションを高められる可能性がある。

 

 この職務特性理論を知ってから改めて日経ヘルスケアの特集を読むと、有用性やフィードバックが効果を出している事例が散見され、少し腑に落ちるようになった。どの職場でも職員のモチベーションは問題になる。この職員は何でやる気がないのかな?と疑問に思ったら、モチベーションが低いという言葉を逃げ口上にせず職務をデザインする努力をしたいと思った2022年末であった。

 

2023年1月4日

H.M

 

1)日経BP 日経ヘルスケア,2022.10 No396

2)入山章栄:世界標準の経営理論,ダイヤモンド社 2019

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