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コメディカル組織運営研究会

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no.53 「未来に寄せて」

  新年あけましておめでとうございます.本年も当研究会は、組織運営に勤しむ皆さまの寺子屋的存在としてあり続けることを目標に、目前のタスクを確実にクリアし、コツコツと実績を積み重ねていく所存にございます.引き続きのご支援、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします.

 

 さて、今年最初のコラムです.ここ最近で多く取り上げられている話題の一つとして、人工知能を挙げることに異議のある人はいないでしょう.人工知能(Artificial Intelligence : AI)とは、コンピューター上で知的な作業を行うソフトウェアで、近年の発展の速さには目を見張るものがあります.身近なところでは、iPhoneやGoogle Homeで使われている「Siri」や「Googleアシスタント」などの音声操作アプリから、今やプロ棋士からも白星を勝ち取るまでになった将棋ソフト「PONANZA」、その他にもお掃除ロボットや車の自動運転など、世の中に幅広く取り入れられようとしています.

 

 人工知能の最大の強みは、その情報処理能力にあると思います.実際、人工知能開発における現在のようなブレークスルーは、コンピューター処理能力の飛躍的な向上により、大量のデータ(ビックデータ)を分析し、意味のある知識を取り出す(データマイニング)ことをベースに、ディープラーニング(深層学習)が可能となったことによりもたらされました.これにより、人間の脳には到底処理しきれない量の情報を解析し、必要な情報を探して統合する、ということが可能となっているのです.

 

 一方、人工知能の発達によりもたらされる技術的失業も話題となっています.技術的失業とは、技術が進歩して労働生産性が上昇することに伴い起こる雇用の喪失のことです.例としては、銀行にATMが導入され、窓口係が必要なくなり職を失うこと、などがあげられます(昨今報道された、大手銀行の大規模リストラなどは、将来的なことを見越しての対策であると考えると頷けます).俗に言われる「コンピューターによって仕事を奪われそうな職種はどれか」、という問題です.

 

 幸いなことに、これまでに発表されている予測では、我々のようなリハビリテーション専門職が人工知能にとって代わられる可能性は低い、と言われています.その理由はどのような要因に基づくものなのでしょうか?個人的には、「身体知」にあると思います.コンピューターには、言葉では明示しがたい無数の身体感覚に基づいた知識である「身体知」を持ちえません。この身体知は、我々の通常の診療では常に重要であり、時には何よりも優遇される場合もあるかもしれません。「敏感力」、「察知する能力」、「感じる能力」など表現はさまざま使われますが、実際接している相手が放つ雰囲気を感じ取り、その場で最善策を講じていくことがコンピューターにとって不得手であることは容易に想像がつきます.

 

 同じようなことは、組織にも当てはまるような気がします.組織は生物の一個体ではありませんが、常に変化し、皮膚感覚に近いものを有し、決して無機質ではなく有機的に活動しています.あらゆるデータから導き出された理論を実際の現場に落とし込み、組織運営を実践していくことは、我々の仕事と同じように、人工知能だけではできない、創造性で面白い取り組みだと思えてなりません.

 

2018年月1月1日 M・Y

 

[参考図書]

井上智洋:人工知能と経済の未来、文春新書 2016

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