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no.89「OODAループ」

 「OODA(ウーダ)ループ」という考え方をご存じでしょうか?

 元々はアメリカ空軍のジョン・ボイド大佐により提唱された、軍事行動などの予測不能な場面で、現場での臨機応変な意思決定を目的としたもので、現在アメリカ海兵隊でも採用され、湾岸戦争などでも成果をあげている考え方です。

 

 「OODAループ」は「観察(Observe)」「情勢判断(Orient)」「意思決定(Decide)」「行動(Act)」という一連の活動から構成されます。

 観察とは情報収集であり、情勢判断は、収集された情報の解釈を行うこと、その解釈にもとづいて現場で何らかの意思決定を下し、実行に移されます。

 「PDCAサイクル」のように、トップダウンで「計画(Plan)」を立案できない戦場のような現場で有効な考え方で、大枠のミッションと最低限の資源、権限を現場に与え、上司の介入は最低限にして、ミッションを達成させるというものです。

 まさに正確さよりもスピードが重視される現代のビジネスにぴったりの考え方ですが、すでにお気づきかと思いますが、これはリハビリテーションの臨床そのものの考え方です。

 

 理学療法を例にしますと、

 

 観察:観察、検査、測定

 情勢判断:統合と解釈、治療の方向性、ゴール設定

 意思決定:プログラム立案

 行動:具体的な運動療法

 

 という感じになるでしょうか。そして、行動の結果を観察して、情勢判断をしてという具合に「OODAループ」を素早く回すというのも、リハビリテーション臨床そのものです。

 処方を出す医師や、上司は大まかなゴール(ミッション)は指示しますが、方法に関しては「OODAループ」を回す各スタッフに任せているのではないかと思います。

 

 「OODAループ」で重要なのは、2つ目の「O」である「情勢判断(Orient)」であると言われています。情勢判断ができるかどうかで、主体的で前向きな、素早い行動のベースになるのです。これも、リハビリテーション臨床と親和性があります。

 情勢判断は「何がよい状況か」「何を優先するべきか」など、現場スタッフの主観的な価値観を含むもので、ゴールが「歩けるようになる」など分かりやすいものであればよいのですが、在宅医療や終末期医療のようにQOLと安全を天秤にかけなくてはならない場面などでは、個々のスタッフの価値観・人生観が問われます。

 現場で素早く「OODAループ」を回すためには、日ごろから自分の価値観・人生観と向き合うこと、また職場単位で何を優先する組織なのかを決めておき、各スタッフである程度同じ情勢判断ができるようにしておく必要があります。

 権限を委譲する上司の仕事は、自分たちは何を優先する組織なのか(ミッション)を決定することやそれが守られているかをチェックすることにあるのかもしれません。職場の価値観・文化をつくることは、上司の仕事であると思います。

 

 今回は「OODAループ」とそれを実践するための上司の役割について書きました。「ティール組織」など上司やリーダーの命令ではなく、自律型の組織を目指すのであれば参考になる考え方だと思います。

 

2021年1月5日

N.K

 

<参考文献>

チェット・リチャーズ(2019)「OODA LOOP(ウーダループ)」東洋経済新報社

原田勉(2020)「OODA Management(ウーダ・マネジメント)」東洋経済新報社

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