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no.83「リハビリテーション専門職は社会的説明責任を果たしているのだろうか?」

 近年、社会的説明責任に関して言及されることが多い。説明責任はアカウンタビリティ(accountability)の日本語訳であり、その語源は財務会計用語のアカウンティング(会計)とレスポンシビリティー (責任)の合成語である。一般には会計主体である企業が株主等から委託された資金を企業の経営目的に適正な使途に配分し、その保全をしなければならない責任(財産保全責任)とその事実や結果の状態を株主等に説明報告する責任(説明報告責任)を表す概念とされる1)。企業においても、株主や従業員などであった利害関係者の範囲が顧客さらに国民全体へと広がり社会的説明責任が重要視されてきた。これを医療専門職に当てはめると、公的保険による報酬を得ることを国民から認められている専門職は説明責任を果たす必要があるとも言える。その対象は利害関係者である対象者(患者・利用者等)のみならず社会全体である。その考え方からも医師をはじめとする医療専門職は報酬の有無にかかわらず、様々な方法で社会に貢献するために取り組みを行っている。当研究会はリハビリテーション専門職多いためその立場で検討するが、「リハビリテーション専門職(以下リハ専門職)は社会的説明責任を果たしているのか」について考えてみたい。

 

 リハ専門職のほとんどは公的保険内で勤務することが多く、その所属する施設から報酬を得ている。公的保険により報酬を得て対象者に対して適切な医療サービスを行い対象者の幸福に貢献していると言えば確かに説明責任を果たしているとも言えなくはないが、ある意味当然の業務であるとも言える。施設単位で地域のために様々な貢献をしている事業所もあるが、これは施設が社会的説明責任を果たしているのであり、リハ専門職自体が果たしているとは言い難い。医師の指示の下で、開業権のないリハ専門職には社会的説明責任を果たすことはその資格の特性上困難であることが多いと考える。

 

 しかし近年リハ専門職が都道府県・市区町村の職能団体単位で自治体と協力し介護予防等を通した活動や、公益事業を行うことが増えている。これらの活動は、地域住民の健康や幸福の向上を目指すために行われているものであり、医師の指示によって行っているものではなく、リハ専門職が自律的に行っている活動である。このような活動はリハ専門職の社会的説明責任を果たしうるものと考える。高齢化がますます進む日本において、国民からのリハ専門職に対する期待が増加していると感じる。私は東京都士会所属の理学療法士であるが、市区町村単位で介護予防事業に参加すると多くの地域住民が比較的高い満足感を得ていると感じる。リハ専門職が持っている高い知識・技術は病院施設の対象者だけではなく、もっと多くの人々にも有益なものであり還元していく必要があると考える。医療の中でも成果主義を求められる状況ではあるが、それは医療プロフェッショナリズムの低下をますます低下させることにつながる。リハ専門職として、高い知識・技術を持ちその能力を自律性をもって社会に還元できるこのような活動を拡大していくことが重要であると考える。

 

2020年7月9日

J.Y

 

引用文献:

 1)藤垣裕子:科学者の社会的責任の現代的課題. 日本物理学会誌65(3).2010

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