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no.54 「組織再考」

  昨年末から不祥事が次々と出て、何かと騒がしく、日本相撲協会の理事選挙がニュースになっている。落ち着かない中での選挙であったとは思うが、この一連の流れの中で気になることは人ぞれぞれと思われるが、私は不祥事云々より、一体全体どういった組織なのか?ということが気になった。

 

 上田1)は「組織(organization)とは、複数の人間が共通目的を達成するために集まって行動している社会的システム」と定義しており、組織に「複数の人間」「共通目的の達成」「社会的システム」の3つの要素が必要であることを述べている。

 複数の人間が必要であることは言うまでもないが、それだけではだめで、組織全体の「共通目的」を必要とする。メンバーがそれぞれに目的を持っていて、それが似通った目的であるがゆえに集まっていたとしても、単なる集まりにしかすぎず、組織とは言えない。組織全体で追求する目的が必要である。

 

 そして「社会的システム」である。このシステムとは、相互作用関係にある複数の要素から成り立った総体を指す概念である1)。この相互作用関係には、公式なものもあれば非公式なものもあるが、複数の人間の間に相互作用関係が存在していることが組織には必要なのである。つまり、複数の人間が集まり、組織全体の共通の目的があって、個々の成員がそれぞれの役割を果たしているだけでも不十分ということである。

 

 このような3つの要素で組織を考え、日本相撲協会という組織を眺めてみると、「共通の目的達成」と「社会的システム」に問題があるように見える。

 

 まず、「共通の目的達成」については、その内容について云々言うつもりは毛頭ないが、昨年来の一連の流れを見ていると、共通の目的(相撲文化の振興と…)を達成しようと成員が動いているようには、多くの人の目に映らなかったのではないだろうか。

 

 また、「社会的システム」については、マイナスの意味での相互作用関係が存在しているのかもしれないが、少なくとも「共通の目的達成」のための相互作用関係が存在しているようには見えなかった。

 当然、私が得られる情報には限りがあり、得られた情報自体に偏りがあることは否めない。しかし、そうであったとしても、それでもやはり足の引っ張り合いにしか見えず、何の歩み寄りも改善もないままになっているように感じるのは、私だけではないと思う。つまり、今の状況だけとってみても、組織としての問題解決は難しいと考えられる。

 さらに、これが古くからある組織ということも問題を難しくしている。92年も続いた組織には組織の歴史があり、組織の変革は簡単に進まないと思われる。長く続いた組織では事の本質や問題の内容よりも、良くも悪くも「歴史と伝統」が重んじられる傾向が強い。そのため、長く続いた組織ほど問題解決が難しい。

 

 そして、もう一つ。元力士のみで組織が構成されていることである。Wikipediaによれば、相撲部屋は①横綱、大関 (大関から陥落した力士も含む)、②三役(関脇、小結)通算25場所以上 、③幕内通算60場所以上(番付制限なし)の3つのうち、いずれかの条件を満たし、師匠の了承を受けることにより、引退後1年以上経過で理事会の承認を得れば新設できる。また、既存の部屋を継承する場合は、①幕内通算12場所以上 、②幕内・十両(関取)通算20場所以上のいずれか1つを満たし、理事会で相撲部屋継承者と認められれば、現役を引退して部屋を継承できる。

 つまり、元力士のみの構成となるため、そこで組織運営や改革をしていくのは普通に考えても難しいと言える。日本テニス協会や日本サッカー協会など、他の組織もみてみたが、元選手のみで構成されてはいない。そういう点でも、組織運営や問題解決の難しさに拍車がかかっていると考えられる。

 

 このようにニュースになっている組織を「組織」の定義から考えてみて、いろいろ気づくことがある。また、「私の常識、あなたの非常識」という冗談?があるが、同じ職種の集団、同じ医療職の集団なども気をつけなくてはいけない。そして、今度はその気付きから自分の属しているいくつかの組織について考えてみてはどうだろうか。

 

2018年月2月10日 Y・I

 

[引用・参考図書]

1)上田 泰:組織行動研究の展開.白桃書房,東京,2003.

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