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no.3「医療プロフェッショナリズムを伝える」

 近年、リハビリテーション部門に限らず医療福祉施設は仕事の結果を求められることが多くなりました。1日何単位対象者に関わったとか、月の診療報酬がいくらだとか、委員会や係りなどの役割をどの程度担ったか…。結果を求めることは非常に良いことですが、ともすれば医療職のプロフェッショナリズムを阻害してしまうと感じます。

医療プロフェッショナリズムの定義はいくつか存在しますが「高い技術知識を備えていることにより権利を与えられているため、利他的で公益を促進し自律的である態度を持つこと」と私は概ね理解しています。私たち医療専門職はその職種上、技術知識とともに当然持ち合わせていなければならないものです。

最近、「医療プロフェッショナリズム教育:日本評論社」という本を読みました。本書は米国の医師に関する内容であり、保険制度や裁量権の強い資格であるという違いがありますが、多くの点で私たち日本の医療専門職にも役立つ内容があります。医療プロフェッショナリズムとは何か・なぜ必要なのか・社会的な変遷中で求められることなど学ぶことが多いですが、最も興味深い点は、医療プロフェッショナリズムを教育プログラムとしてデザインしていることです。今までは「自然と身に付くもの」と認識されたものでしたが、意図的な教育として伝えていくことが本書の目的です。この教育プログラム中核は、状況に埋め込まれた学習(正統的周辺参加)です。つまり臨床実習・診療見学・実際の業務の中で、意図的にプロフェッショナリズムを伝え、それを学習者が振り返る(省察)ことにより学んでいきます。上司・先輩・教育者の見学や自らの経験のなかで伝え、学んでいくことです。

対象者や公益を最優先にした態度を経験することは、学習者の医療プロフェッショナリズムを促進します。しかし専門職側の都合や、施設の利益を追求しすぎた態度は抑制してしまいます。私たちがついやってしまう、軽率な関わりや発言、効率を求めすぎた行動は学生や後輩にはどのように映るのでしょうか。本書のように教育プログラムとしてデザインすることはなかなか難しいことですが、上司・先輩・教育者としてプロフェッショナリズムを示すことは出来ます。

 私たちの職場環境は日々変化しています。保険制度の改定・社会からの要求の高度化・新卒者の多様性・仕事領域の拡大…。そのような中、プロフェッショナリズムを伝えていくことは今まで以上に難しくなり、そのため私たちの職業の未来をも左右すると言えます。未来を支えていく人達に、どのようにプロフェッショナリズムを伝えていくかは重要なテーマです。私自身、教育者として仕事をする中で、私たちが経験しているこの素晴らしい仕事をいかに伝えていき、いつまでも魅力的で、夢のある職場・職業であって欲しいと願います。

J・Y

2013.9.30

 

文献:リチャードクルーズ 他(編著), 日本医学教育学会 (監訳)「医療プロフェッショナリズム教育: 理論と原則」日本評論社 2012