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no.1 「普段はしない、ちょっとまじめな話」

 理学療法士という医療専門職として働きだしてもう随分経ちました。

若かりし頃は,諸先輩方に叱咤激励されながら,厳しい(笑)修行時代を過ごしたものです.その時には,担当患者さんの身体機能やADLの改善など、臨床業務において結果を出すことが求められていました。

 臨床7年目くらいの時でしょうか、400床をちょっと超えるくらいの病床数の関連病院の開設に際し,リハビリテーション部門の立ち上げに携わる機会をもらいました。院内の医師や看護師、他職種との話し会い、疾患別リハビリテーションを行うための必要物品の購入・搬入・レイアウト・設置、リハビリテーション業務マニュアルの準備やシミュレーションなど、色々な事を同時に考え、遂行することが求められました。

 その中で痛感したのは、客観的で俯瞰的で冷静な視点を持ち、常に全体を見渡すことの重要性です。もちろん、大いなる理想(野望)はたくさんあるわけですが、全てをかなえる事は財政的にも人的にも不可能です。そのため、新しく開設される病院において、リハビリテーション部門に対する病院内外のニーズについて、当時の上司とよく話し合いました。「こんな患者さんのリハビリを優先的に行いたい」という希望はあるにはあるのですが、そればかりを通していると他者からの信頼はなくなります。そのバランスを見極めることはとても重要なのだな、と経験から学びました。

 また、開院後の診療業務の調整を進める際に重要であったのは、経営陣や他部門、しいては部門のスタッフ達に対して、自分たちの業務内容を説明し如何に理解を得るか、ということです。そのため必要であったのは、実際の業務内容の精査を適宜行っていくことや、診療実績の客観的データを積み重ねることでした。ラッキーなことに、この(とても面倒な)作業により、自分たちが提供している医療サービスと,周囲にニーズに「ずれ」がないかを確認することができましたし、中長期計画を考える際の基盤にもなりました。

 しかし、医療は人によって提供されるサービスです。綿密な情報収集のもと、様々な経営理論を駆使して計画を立てたとしても、最終的に実行するのはスタッフです。各個人が自律して物事を成すことのできる「学習する組織」を如何に実現していくか、という難しい命題が常に残るのもまた事実です。

 そのような中で執筆させていただいたのが,「病院・介護事業経営」(理学療法ジャーナル46(12)pp1115-11222012)です。この数年間、私自身が経営学を学ぶ機会を得て、ある程度の知識を得ることができました。それらを、私と同じような気持ちを抱き、管理業務を行う方々と共有できるよう、なるべくリハビリテーション部門のシチュエーションに落とし込みました。ご興味在りましたら、ご一読いただければ幸いです。

 この先、日々変化する社会情勢や医療行政の中での医療機関の舵取りには、決してゴールがありません。そのような厳しい環境の中、当研究会が、最大限の職能を発揮できる集団をめざし、各自の施設においてオペレーションを具体化,実践していこうとしている方々にとって、ほんの少しでも勇気を持てる場になればと、心より思います。           

                                        2013.8.27

 M・Y