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no.124「研修評価の視点」

 私は養成校に勤務しており、職務上、授業評価の在り方について検討するため、参考にしようと手にとった本が『研修開発入門「研修評価」の教科書「数字」と「物語」で経営・現場を変える』(中原淳・関根雅康・他、ダイヤモンド社、2022)でした。

 皆さんも多くの研修に参加されると思いますし、企画されることもあると思います。そして、多くの研修会で、終了時にアンケートに回答することがあると思います。このアンケート内容は、研修会の満足度とご意見、そして今後に向けての要望が多いのではないでしょうか?私もこれまで多く答えてきましたが、あまり深く考えずに回答していました。

 しかし、この本を読んで、研修評価に対する考えが大きく変わりました。

 そもそも、研修は何のために受けるのでしょうか?仕事に関連する研修は自発的に参加する研修もあれば、職務遂行上、必要な研修であるため、職場から参加するよう求められる職場あるいは職場外で参加する研修もあると思います。いずれにしろ、その研修に参加することによって、自分の仕事あるいは職場に有益であるということが大前提です。そして、この有益とは「研修で学んだことを、現場で実践し成果につなげていくこと」という意味であり、これを本書では「研修転移」と定義しています。

 したがって、前述した終了時のアンケートは、この研修転移を評価してこそ、その研修が有益であったかがわかることになるといえます。逆に言えば、研修を企画する際、この研修転移を意識する必要があるともいえます。

 つまり、研修で学んだことを仕事に活かすと、どのような成果につながるかと考えてみることです。先行研究では、研修が成果・業績に対して直接効果はありませんが、媒介変数(従業員の行動変容)を通して良い影響を与える間接効果があることがわかっています。そして、研修で①関連度(自分の仕事に関連しているか)、②有用度(学んだことが、仕事に役立ちそうだ、と思うかどうか)、③自己効力感(研修で学んだことを、仕事に活用できると感じる)の3つを感じると、職場で学んだことを取り入れる行動、すなわち、前述した行動変容につながることがわかっているそうです。また、これまで研修評価でとられてきた「満足度」は、先行研究において学習、行動、成果に結びついていないことがわかっており、よって、今後の研修評価では関連度、有用度、自己効力感を評価すべきとしています。

 具体的な評価の方法も本書に述べられていますので、興味のある方は手にとって読んでいただきたいと思います。私自身は、この考えを活用して授業評価を考えれば良いのか!と、感じていたモヤモヤが晴れて、スッキリしました。もちろん、研修に参加する際、いつも「この研修が仕事に活かせるのか」「どんな成果を生み出せるか」などと、いつも考えなくても良いとは思います。しかし、例えば職場内教育で研修を企画する際には、どのような成果を期待しているのか(到達目標)を考えて企画し、研修評価すればよりよい職場内教育ができるのではないでしょうか。

2024年3月6日

Y.I

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