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no.66「初心に立ち返る その2 ~相手の話を聴くことから始める~」

 今回は、前回のコラムを受けて、勝手にその2として書きます。

 私は、昨年1年を振り返って、年末からどうも自分のやっていること(仕事)のやり方や結果に不全感みたいなものを感じていました。一所懸命に取り組んではいるけど、空回りというか、思ったような結果にならなかったといった感じです。

 そこで、なぜこうなっているのか、普段は読まない占いの本を読んでみると、なんと!「2020年後半まで主に人間関係で試練の時」とありました。そして、開運には「仕事関係の本を読む」とあり、素直な?私は買いためていた本を読みました。

 そこには、なぜ昨年うまくいかなかったか、腑に落ちることがたくさん書かれていましたが、前回のコラム「初心に立ち返る」を受け、学んだこと踏まえて、今回は書こうと思います。

 学んだことの中でも、最も私が初心に立ち返ろうと感じたことは「相手の話を聴く」ということです。

 医療職において対象者の話を聴く、管理職であればスタッフの話を聴く、ということは基本中の基本だということは言うまでもありません。また、職場で問題が起きる原因の多くはコミュニケーション不足によるものです。

 特に、職場運営において、上司がリーダーシップを発揮するためには、スタッフのフォロワーシップが必要であり、その土台には上司とスタッフの信頼関係があります。そして、その信頼関係が築けているということは、良好なコミュニケーションを図れているということでもあります。

 この良好なコミュニケーションを図るためには、自分の言いたいことが伝われば良いわけではなく、相手の話を聴くことの方が重要です。前述したように「相手の話を聴く」というのは、医療職にとっては対象者の話を日常的に聴いているわけですから、自分はできていると思っている人の方が圧倒的に多いと思いますし、過去の私の研究でもそのような結果が出ています。

 では、「相手の話を聴く」ポイントって何でしょうか?私も含め、医療職にありがちなのは、相手の話を聞きながら「何かアドバイスしなくちゃ」とか「何を言ってほしいんだろう」とか「相手のためにならなくちゃ」と思って聞いていないでしょうか?これって、相手の話を聞いていると言いつつ、相手の話よりもそれに伴う自分の思考に気を取られていませんか?

 例えば、何かアドバイスをしたとしても、実はアドバイスは「現状が良くない」と言っているのと同じなんだそうです。つまり、聞きながらこちらが「自分がどうするか(次に何をいうか)」を考えていたり、話の内容の善悪や良否を判断したり、それを話している相手の評価をしながら聞いていると、それが相手にも伝わって、相手は安心して話せなくなってしまうそうなのです。

 長く仕事をしていればいるほど、年長者として、あるいは、上司として相談を受けたり、アドバイスをしたり、人事考課の面接をしたり…と「相手の話を聴く」という場面が多くなります。そうなるとどうしても相手の話に関する自分の思考に捉われて、実は相手の話を聴けていないということがあるように思いませんか?

 また、相手の話をちゃんと聴ければ、アドバイスしなくとも相手が自分から変わっていける道を見つけられるということであり、逆に、アドバイスすることによって、相手の自分から変わろうとする力を奪っていることにもなるとも言えます。

 その時は「良いアドバイス、ありがとうございます」と相手は言ってくれるかもしれません。でも、多くの場合、その人は同じような事でまたつまずいて相談に来ます。それでは、相手の成長にもなりませんし、アドバイスした方も「前にも言ったけどなぁ」と思って、不毛なループが回り続けることになります。

 私の場合、養成校の教員を長くやっていて、学生教育も職場運営も「相手の話を聴く」ということはできたつもりになっていたなぁと今回深く反省しました。特に、学生教育では彼らに行動変容して欲しいばかりに、どうなって欲しいかを伝えることに必死でしたが、全く思ったようにはいきませんでした。今思えば、相手の学生にしてみれば、私が必死で変えようとするので、自己防衛反応により必死で抵抗し、結果、変わらなかったんだとわかります。

 また、「相手の話を聴く」ことに関して振り返れば、理学療法士や教員になりたての頃は、相手が対象者であっても、学生であっても、とにかく「話を聴く」ことに集中していたと思い出しました。それは、経験がなかったから自分の思考に捉われようがなかったに他なりませんが、「話を聴く」にはとても良い状態だったと思います。

 今回の気づきを通して、前回のコラムに「メンバーとともに自らも成長する」とありましたが、そのためには、メンバーを無理やり成長させようとするのではなく(メンバーを成長させようと思って話を聴くのではなく)、メンバー自らが成長できるようにサポート側に回る(メンバーが成長のきっかけに気づけるように話を聴く)ということだと思いました。

 初心に立ち返って「相手の話を聴く」ことを公私ともに実行できることが今年の目標の一つです。

 

  <注釈>

  「聴く」と「聞く」は異なる意味で用いています。

  聴く(listen):注意しながら耳を傾けること(傾聴)

  聞く(hear):音や声を耳で感じ取ること

  参考文献:山口美和:PT・OTのためのコミュニケーション実践ガイド(第2版),医学書院,

       東京,2016,pp.50-60.

 

  <本の紹介>

1)相手の話を聴くのに詳しいことを知るための本

 細川貂貂・水島広子:やっぱり、それでいい。~人の話を聞くストレスが自分の癒しに変わる方法,

           創元社,大阪,2018.

2)「相手の話を聴く」必要性とリンクした本

 石田淳:マンガでよくわかる教える技術2〈チームリーダー編〉,かんき出版,2015.

 竹本文美・田中雅美・他:脱・しくじりプレゼン―言いたいことを言うと伝わらない!,医学書院,

             東京,2018.

 

 

2019年2月1日

Y.I

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