ある部署の責任者から事務責任者へとある問題に対して提案をしました。事務部門の会議で、その提案を議論し反対意見がなく合意したものと思われ、提案が通りました。しかし、会議後に稟議書を申請したら、申請が通らず、ある事務部門の方から反対の意見があり、提案が採用されていたものが通らない結果になりました。理由を聞くと、「事前に話がなく、よく理解できていない」といわゆる根回しが足りないことが原因でした。
このように、皆さんの組織にも、公式のルールで検討する前に、利害関係の調整をして非公式の手段をとる場合があると思います。いわゆる「根回し」「ゴマすり」など、これが自部署や自分の影響力を高め、意思決定に影響を与える政治といわれる行動です。日頃、組織内で起きている政治的な行動について「科学的」に捉えている書籍を取り上げました。
社内政治について、個人的にはあまり良い印象はなく、できるだけなくすものと考えていました。みなさんも風通しの良い職場を作るために、多くの意見を取り入れていると思いますが、「多数者の意見」や「ポジティブに評価されている価値観」が通りやすいと思います。この議論の場では同調圧力があり、その圧力を利用してコントロールする人がいます。このような場が政治的な状況になっていると考えられています。
このような場は、常にあるため社内政治は表裏一体であることを踏まえて、健全に調整機能として活用していく姿勢が重要と言われています。社内政治は、避けることができないため組織において上手くマネジメントしていく必要があります。
そこで、社内政治をマネジメントするための必要な能力である政治力についてご紹介します。政治力は、4つの力の要素で構成され、それぞれの力は相互依存であると説明しています。
①政治知識
政治知識とは、組織内の暗黙の状況を正しく理解するための知識で、権力やネットワーク(非公式に誰と誰がつながっている)、利害関係者の意図や感情などを把握する能力です。また、意見や行動、提案が正当化どうかを見極めるために、文脈を読み取る力(文脈知識)があります。
②政治スキル
政治スキルは、社内政治をうまく活用して物事を進めるスキルで、組織内の対人関係や行動に関するものです。「他者を理解する」や「他者の行動に影響をあたえる」で構成されており、感情を読み取り行動できる能力でもありますが、組織の文脈の理解に関わるスキルと言われています。
③政治準備性
政治準備性とは、組織にある政治的な現実の受け入れと対処、そしてマネジメントする姿勢です。その姿勢は、免疫がない段階から対処や耐える段階、そして活用と成熟していく3段階の過程があります。リーダー的なポジションで成果を出す方は、政治的準備性においては最終段階に到達すべきとされています。その政治的な認識が行動につながる意思があり、政治意思と言われています。その意思が自己志向的か利他的かにより、組織への貢献が異なります。この政治行動を倫理的に行う特性の概念として、政治的思慮があり倫理的な判断力を示しています。
④政治的パワー
パワーは特定の個人や小集団に依存するとパワーバランスが崩れ、利己的な政治行動が発生する可能性があります。病院組織内は各専門分野に特化し効率性を求めていますが、組織全体の中でパワーバランスを踏まえた組織設計が必要となります。
4つの力を紹介しましたが、重要と感じたのは政治的思慮が高くなるための倫理的な判断力、倫理性をどのように育み、政治力を使って組織に良い価値を生み出すかという点です。マネジメントする上で、政治力を利己的でなく利他的や組織のために使う意思、倫理性が大切です。
社内政治を感じているかどうかは、スタッフの心理や行動に影響すると考えられており、「負の政治」がある職場では、警戒心が高まり協力しない、仕事への関心や意欲をなくす、退職の意思やストレス反応を高めると報告があります。改めて社内政治という視点から、自組織を振り返ってみることができましたので、関心のある方は本書をお勧めします。
2026年2月9日
H・M
(書籍)木村琢磨 社内政治の科学 経営学の研究成果 日本経済新聞出版 2025年12月
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