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プログラム・カリキュラム評価の視点 ~カークパトリックモデルを通して~

実施している教育を常により良いものにするためには、実施した教育自体の評価が重要となります。養成校の教育や職場での新人教育、本研究会のような参加者が自らの意思で参加している研修会も含めて、その教育内容が「本当に意義のあるものだったのか」「もっと良い内容にするためにはどこを改善すると良いか」という事につながるからです。これらは「プログラム評価」や「カリキュラム評価」と言われますが、その評価方法は様々なものがあります。研修会を実施するとよく、終了直後のアンケート評価を行うと思いますが、それもプログラム評価になります。しかし、私自身も行った研修会の後にアンケートを行いますが、結果をみると「あぁ、皆さんなんとなく満足して頂けたようだ」とかは分りますが、それだけでは本当に学習者の役に立ったかどうかは分らない事が多いです。評価の視点として学習者が受講した感想しか調査していないためだからです。つまり教育や研修会を行う目的を適切にとらえた評価を行う必要がありますという事です。そこで、今回カークパトリックモデルのカリキュラム/プログラム評価モデル(以下カークパトリックモデル)を紹介します。

カークパトリックモデルは、ドナルド・ L・カークパトリックが1975年に提唱したもので教育・研修の効果の評価を4段階に分類したものです。現在ではレベルをより詳細にして6段階で評価することもあります。以下にレベルと評価の例を示します。

 

Level 1 学習者の反応

 学習者の反応を測定する評価です。学習者に対してアンケートやヒヤリング調査を行う評価です。学習者の反応のみなので、本当に能力が獲得されたかは測定できていません。しかし最も容易に測定することが可能であり、良く行われる方法です。

Level 2a 認識や態度の変化

獲得して欲しいと願う態度等への認識の変化等が含まれます。学習者が「禁煙しなければならない」とか「こうあるべきだ」という認識を持っているかどうかを評価します。行動変容が伴っているかは含まれません。

Level 2b 知識や技能の獲得

 学習者が実際に知識や技能を獲得できたかを測定する評価です。教育した内容が知識や思考中心であれば、筆記試験やレポートを課題とすることで確認できますし、技能であれば客観的臨床能力試験(OSCE)等で確認する事が出来ます。Level1よりやや手間がかかりますが能力が獲得したかどうかは評価が出来ますし、評価の信頼性は比較的高いです。

Level 3 行動変容

 教育を受けて、学習者が実際の職場等でどのように活かしているかを評価するものです。具体的な方法としては、上司・同僚・他職種も含めた他者評価を行います。評価する時期は教育を受けた直後ではなく、1か月とか半年とか少し時間をあけて行い、行動が変容したかどうかを評価します。

Level 4a 組織における診療の変化

教育を受けたことで、組織内での診療がどのように変化したかを評価します。具体的には効率の良い診療が行われたかと言った費用対効果等が含まれます。

Level 4b 患者の利益

学習した事の結果を活かして患者の利益に反映したかを評価します。実際に患者さんの機能改善や幸福につながったかどうかの評価になります。

 

以上を確認するとレベルが上がるほど、困難になり、正確な評価は難しくなります。ある研修会の結果“だけ”が患者の幸せに直結するとは言えないために信頼性も下がります。しかしここで重要なのは、4年間の養成校のカリキュラムであれ1日の研修会であれ「何を目的に教育実施して」「その効果を判断するためには、どのような方法で行うと良いのかを検討する事」だと言えます。私も含め教育の実践者は、良い教育を行ったから学習者には良い影響を与えているはずだと思う傾向にあります。いつも心のどこかに「学習者のためになっているのかなあ」とか「もっと良い教育のためにはどのような事につながる必要があるのか」等を考えながら、教育の実践をしていきたいものです。

 

202110月7日

J.Y.

 

<参考・引用文献>

 

錦織宏,西城卓也,田川まさみ:医学教育におけるカリキュラム/プログラム評価.医学教育45279-862014

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