コメディカル組織運営研究会
事務局
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医療や介護の現場で働いている若手のセラピストのみなさんの中には、組織運営の場面でいろいろな壁を感じている方たちも多いと思います。私たちセラピストには、患者さんの診療に関連したことを勉強できる場はたくさんありますが、自分が所属している医療機関、介護施設など「組織」をどのように運営すればいいのか、について学ぶ機会はほとんどありません。そのような中、まだまだ臨床に集中したいはずの「30代前半の中堅」あたりの年代が、さまざまな理由により、自分の意志とは関係なしにマネジメント業務を行わなければならない状況におかれている、という話を多く見聞きします。
「リハセラピストのためのやさしい経営学」は、そんな悩ましい日々を過ごしているであろう、経営学にあまりなじみのなかった中堅から若手のセラピストの皆さんを対象にしています。そして、臨床の職場でよく耳にする「困ったこと」や「解決すべきこと」を提示した上で、問題解決のための考え方や実践方法について、経営学的な視点で一般化されたものごとを、経営理論としてできるだけ分かりやすく伝えることを大きな目的としています。もちろん、すでにマネジャー業務に勤しんでいる方々にも、これまでの知識や経験を整理してもらい、自分の軸足を確認できるものと考えています。
著者のひとりである私も、日ごと医療機関で臨床・教育・研究を行うかたわら、リハビリテーション部門の管理者として、マネジャー業務をこなしているひとりです。臨床家としては、目の前の患者さんに対して最善な医療を提供することが最優先課題となります。一方、マネジャーとして考えた場合、組織の方針や目標を考慮したうえで、スタッフ一人ひとりが自律して責任感を持ちながら、それぞれの能力を発揮できる環境を提供できているか、ということに心をくだく毎日であると感じます。経営学を学んだ身として、そして学び続けている研究会として、日頃からどのようなことを考え、そしてどのように実践をしていくか、そのエッセンスについて本書を通して伝えることができれば、との思いで筆を進めました。
組織の運営には明確な正解はありませんし、また誰も答えを教えてはくれません。1対1の個人への働きかけから、全体を俯瞰的に見てその時々に何をすべきかを選択することまで、マネジャーが考えなければいけないことはとても広範囲です。そんな中、これまでの先人の知恵を集めた「経営理論」を参考にして、いま抱えている問題点を整理し、改善すべきことやその方法を考えぬき、それをスタッフと共有して実践することで業務の改善に結びつける。そんな理論と実践のサイクルを回すことを多く経験し、成功体験を重ねたセラピストが増えていくことが、私たちの未来の鍵を握っているような気がしてなりません。
この本は、そんな考えを共有している当研究会の仲間との、約5年に渡るいろいろな議論から生まれてきたものでもあります。マネジャーに特別な能力は必要ありません。大切なのは、考えぬく姿勢、やりぬく力、そしてほんの少し人のことを優先して考える利他的な心と勇気です。この本を読んだあと、これからの私たちセラピストの未来を担うであろう、たくさんの若手から中堅世代のセラピストの方々が、組織運営におけるさまざまな壁を超える勇気をもち、そして実践していってくれることを願います。
2020年4月7日
M.Y
八木麻衣子、岩﨑裕子、亀川雅人編集 リハセラピストのためのやさしい経営学 南江堂
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