コメディカル組織運営研究会
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先日、日本プロ野球において多大なる影響を与えていた野村克也氏が亡くなられました。
野村氏は選手時代・監督時代ともに偉大な功績を残したことは言うまでもありません。
その具体的な手腕は野村氏自身の手掛けた多くの著書で述べられており、30代手前で中間管理者となった私にはとても参考になるものばかりでした。
中でも私が初めて手に取った野村氏の著書
『弱者の兵法 野村流 必勝の人材育成論・組織論』に書かれていた、
『人間的成長なくして技術的進歩なし』
という文章は、当時私が管理と技術研鑽の狭間でもがいていた思いを解放してくれた一文であり、そして今では部下への指導の際に活用させていただいている一文となっています。
そもそも「人間的成長」の指す意味とは何なのでしょうか。
野村氏は多くの著書で「プロ野球選手に限らず、働くものとして“社会に通用する人間”になりなさい」と書かれています。
人間的成長とは社会性を高めるための成長であると指しており、それが技術の成長につながると語られていますが、多くの医学書や私が受けてきた授業には“人間性や社会性を高めなさい”とは書かれていませんし、直接的に言われてもいません。どのように人間的な成長が技術的な進歩へとつながるのでしょうか。
著書によると、―仕事を通じて人間は成長し、人格が形成される。仕事を通して、世のため人のため、言い換えれば社会の恩に報いていく。それが生きることの意義だと私は信じている。そう考えれば仕事観が変わり、仕事観が変われば仕事に対する取り組み方が変わり、取り組み方が変われば仕事の質が高まり、評価も上がる。―とあります。
当時の私は前述した管理と技術研鑽の狭間でもがいていた状況でしたが、技術の研鑽こそがプロフェッショナルになれる道であり、患者さんを良くすることだけが部下への示しになると考えていたところもあり、選手として監督として、一流のプロフェッショナルの方からの言葉は自らの行動を一から見つめ直すきっかけとなりました。
もちろん、患者さんを良くすることは悪いことではありませんし、それに尽きるのが医療ではありますが、本当にそれだけが自身の成長につながるのかを考えさせられました。
松下電器産業株式会社(現パナソニック)創始者の松下幸之助さんが創設した松下政経塾で語られたことを書にした
『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』にも、
―仕事にも礼儀がある。挨拶や掃除は、業績とは一見関係がないように思えるけれども、人間としての基本であり、きわめて大切なことである。―とあります。
医療人である前に一人の人間であること、それを肝に銘じて今では管理職をしています。
そのように考えると、管理職は偉いのではなくただの役割に見えてきて、今の私の仕事は職員がどのように心地よく仕事を進められるかを純粋に考えるようになりました。
でももしかしたら部下たちを心地よく仕事を進められるようにする職人になっただけかもしれませんが(笑)。
令和2年2月11日に亡くなられた野村克也氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
2020年3月1日
T.T
[参考図書]
野村克也:「弱者の兵法 野村流 必勝の人材育成論・組織論」.アスペクト文庫.2009
松下幸之助【著】松下政経塾【編】:「リーダーになる人に知っておいてほしいこと」.PHP研究所.2009
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