コメディカル組織運営研究会
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私は昨年から今の勤務先に変わった。ややこしいが、前の職場の前にいたところなので、早い話が出戻りである。ちなみに、最近の学生は「嫁にも行かないけど出戻り」と言ってもきょとんとしている(笑ってもらうとこなんだけどなぁ)。どうやら「出戻り」を知らないらしい。
それはさておき、昨年は一スタッフとしてできることを!と思って働いていたのだが、今年から科長になり、一気に立場が変わって、正直、ここ半年は気持ちが右往左往していた。しかし、昨年行けなかった産業・組織心理学会のある発表を聴き、職場における立場について考え、気づきがあったので、今回はそれについて書いてみようと思う。
発表1)は企業で働く人はどのように上司マネジメント行動を身につけているのかについてインタビュー調査を行い、分析されており、2つの結果が導き出されていた。少し長くなるが、以下に記載する。
一つは、上司マネジメント行動は①ただ上司に相対している段階、②どうしたら上司をうまくマネジメントできるかを探索している段階、③上司マネジメントとは何か・なぜそれが大切かが分かっている段階へ行き着くという大きなプロセスをたどる、ということ。
もう一つは、上司マネジメント行動は[受動的な上司に対する素の反応]から始まって、上司の望む方向で[仕事を円滑にまわす工夫]・[自分らしさを出しながら仕事をする工夫]を経て、仕事を主体的に動かすために[人である上司の気持ちや立場に配慮した行動]・[『成果をあげる』などの目的のために上司を動かす]行動を取るようになるというプロセスをたどる、ということであった。
この発表を聴いて、自分がこれまでスタッフであったときに取っていた行動を思い返してみた。新人、中堅…ときて、臨床であっても教育現場であっても、その場面に応じてこの2つのプロセスを少なからず考えていたように思った。最初はわけがわからないから言われたことをとにかくきちんとやることを目指し、次第に経験を経て、どうすれば仕事がうまくいくか、どうすれば自分のやりたい仕事や方向性に持っていけるかを考え、そして、自分の身の処し方、上司との距離の取り方などがわかり、仕事をうまくやっていくためにはどうしたら良いかがわかってきたように思う。もちろん、イチロー選手が「4000本のヒットを打つために、8000回以上の悔しい思いをしてきている」と言っていたように、うまくいったことばかりでなく、今でも赤面するくらいの失敗も多く重ねての中でということではあるが…。それはともかく、つまり、この発表にとても納得させられたのである。
それで、改めて今の上司としての立場について考えてみた。少ないスタッフの上司であり、大きな病院で言えば、チームリーダーぐらいの立場ではあるのだが、組織でみれば私にも上司はおり、いわば中間管理職のようなものだと気づいた。そして、何を今さら…ではあるが、ここ半年の自分の中の気持ちが右往左往していた理由が見つかったように思えた。つまり、今の私の立場は、一方で上司としての行動を求められ、一方で部下としての行動を求められており、これまで部下としての行動は経験を重ねてきたが、上司としての行動はまだ最初の段階で、上司マネジメント行動にあてはめて考えれば「ただ部下に相対している段階」なのかもしれない。うまく説明できないが、これまで「部下として」経験してきたことと相対してきた上司、先生などや様々な文献や書物などから学んだ自分なりの上司としての振る舞いをつなぎ合わせ、日々の様々な出来事に対応していたんだなぁ、と感じた。
今回、自分の状況をこんな風に理解できたことで、精神的に少し落ち着いた(要は、気負いすぎてたってこと!?)。こうした経験をするたびに、理学療法以外の領域を持っていて良かったなあと思う。行き詰まるほどでなくても、気分転換に掃除をしたり、スポーツしたりするように、いつもと違うところに目を向け、深呼吸してみるのも良いのではないかと思う。そうして、もう一度自分の職場の立場を眺めてみれば、これまでと違った見方ができて進んでいけると改めて思った出来事だった。
Y.I
1)大和田順子,岡田昌毅:企業における上司マネジメント行動の形成プロセスの探索的検討(Ⅰ).第30回全国大会産業・組織心理学会発表論文集.2014:139-142.