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コメディカル組織運営研究会

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no.115「組織デザインにおける「ナッジ」を考える」

 組織運営では、組織を戦略的にデザインし続けることが重要となります.「組織デザイン」とは、様々な能力をもった個人が集まり組織として活動していく際に、一人ひとりがその能力を発揮しながら、組織として最大のパフォーマンスを得るために合理的な活動ができるように、組織内の環境を整えていくことです.組織をデザインする際には、一般的に「構造」、「業務」、「人材」、「情報」、「意思決定」、「報酬」などの要素を、柔軟に組み合わせて取り組んで行くことになります。

 

 組織をデザインする際、マネジャーには「選択アーキテクト」としての重要な役割を果たす必要があります.選択アーキテクトとは、人々が意思決定するための文脈を整理し、ちょっとした仕組みや仕掛けを組み入れることで、組織のメンバーがよい方向へ向かうようにシステムをデザインする責任を負う人です.例えば、スタッフのコミュニケーションを促すために、コーヒーマシーンをオフィスのどこに設置するか、イベントに集まった多くの人がスムーズに入退場できるようにするにはどうすればよいか、などが挙げられます.そしてマネジャーは、組織のメンバーが自分のキャリアや組織全体を「良く」するような選択を自然にできるよう促すため、どのような仕組みを取り入れるか、について自覚して取り組むことが大切となります.

 

 行動経済学の分野では、このように他の人に気づかせたり、他の人に注意を喚起したりするような仕掛けを「ナッジ(Nudge)」といいます.そもそも「軽く肘でつつく」という意味であるナッジは、選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測できるかたちで変えることができる、選択アーキテクチャーのあらゆる要素を意味します.そして、ある介入がナッジとみなされるためには、対象者にとってその介入が少ないコストで簡単に避けることができる必要があります.そのため、税金、罰金、禁止、命令などは、ナッジとして認められません.

 

 では、私たち組織におけるマネジャーが、組織デザインや組織運営に用いることのできるナッジとはどのようなものでしょうか.一般的に役に立つナッジとしては、賢明なデフォルト(初期設定)にする、複雑なことをシンプルに伝える、「選択」と「因果関係」がどのように対応しているかなどの情報をはっきりと示す、役に立つヒントを提供する、などがよく挙げられます.また、ある行動や活動を促したいのであれば、それを「簡単にできるようにすること」が大切であり、その行動を妨げるごく小さな影響を取り除いてあげることが有効となります.

 

 このように、色々な場面で役に立ちそうなナッジですが、医療現場での組織運営においてのノウハウはまだ確立されていません.そこで、当研究会では今年の定例勉強会において、リチャード・セイラ―他著、「NUDGE 実践行動経済学完全版」(日経BP2022)を課題図書として、参加者の皆さんのアイディアを持ち寄り、さまざまな職場での組織運営において応用可能なナッジについての知見を得ていきたいと考えています。

 

 

 ご興味のある方々のご参加をお待ちしております.

 

2023年5月1日

M.Y 

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