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第6会学術集会 抄録

演題1

「リハビリテーション部門におけるトランザクティブメモリーの構成要素に関連する因子の検討」

 新妻 弘悦 東京女子医科大学八千代医療センター

[目的]

 本研究の目的はTransactive Memory System(以下,TMS)の各構成要素に関連する因子を明らかにすることである.対象は首都圏医療法人3施設のリハビリテーション部門スタッフ333名とした.研究デザインは横断的観察研究とし,質問紙にて調査した.

[結果]

 TMS信憑性低値群に比べ高値群では,上司の専門分野についての理解,上司・同僚・部下とのコミュニケーション,組織環境性は有意に高く,組織伝統性は有意に低かった.TMS専門性低値群に比べ高値群では,転職経験,上司・同僚・部下の専門分野についての理解,上司・同僚・部下とのコミュニケーション,組織環境性で有意に高かった.TMS相互調整低値群に比べ高値群では,上司の専門分野についての理解,上司とのコミュニケーション,組織環境性で有意に高く,組織伝統性で有意に低かった.ロジスティック回帰分析によるTMS信憑性の関連因子は,上司とのコミュニケーションと組織環境性で,TMS相互調整の関連因子は組織環境性であった.

[結論]

 従業員の参加度が高く,合理的な組織管理がなされている風土で,TMSが醸成される可能性が示唆された.

演題2

「大腿骨頸部/転子部骨折術後における急性期リハビリテーションの費用対効果」

近藤 千雅 聖マリアンナ医科大学

[はじめに]

 本邦では、医療費抑制のため医療経済学的な研究が重要とされているが、リハビリテーション(リハ)分野では非常に少ない。本報告は、大腿骨頚部/転子部骨折術後に急性期リハを行った70名を対象に、費用対効用分析を行った。

[方法]

 リハ初回と術後1週毎にQOL効用値とBarthel Indexを評価し、リハ医療費、人件費、設備費を調査した。退院時のQOL効用値が1年間継続すると仮定したリハ実施群と、リハを行わず初回のQOL効用値が1年継続すると仮定した対照群各々で、費用対効用分析の代表的指標である質調整生存年(Quality-adjusted Life Years:QALY)を算出し、リハ実施による1年の増分費用を増分QALYで除した増分費用効果比(Incremental cost-effectiveness ratio:ICER)を算出した。

[結果および考察]

 増分QALY0.54、増分費用は162.6万円となり、ICER546.8万円/QALYとなった。医療経済学的に有用とされるICERは約500600万円であり、本モデルでは急性期リハの費用対効用が認められた。

演題3

「リハビリテーション部門における人的流動性が職場満足や診療成績に及ぼす影響-人的流動性が高い組織と低い組織による比較検討-」

宮城 春秀 南町田病院

[はじめに]

近年、リハビリテーション(以下、リハ)部門の組織運営は、病期や疾患別等、多くは病棟ごとに施設基準で必要の人員を専従とし配置するが、それ以上の人員に関して専任や兼任、もしくは配置転換など人的資源の流動性を高く確保している場合もある。  

今回、一般と回復期リハ病棟のあるミックス型の施設で、人的流動性の高い組織と低い組織の違いが職員満足や診療成績に与える影響を検討した。

[方法]

流動性の低い人的組織のA病院53名と流動性の高い組織のB病院の60名に対し、組織形態と職員満足度、客観的アウトカムを調査した。

[結果]

流動性の高い組織は、職場雰囲気が良く、職務権限も高く、カンファレンスに参加でき、FIM効率や入院日数に影響した。

[考察]

流動性の高い組織は、担当として入院から退院まで診療に関わり責任感が高くなり、病状や障害の変化に対し、相談しやすく、対話が活発になり職場環境に影響したと考える。